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国が後押しする男性育休制度
男性の育児休業取得率の向上を目指し、改正育児・介護休業法に「男性育休」が加わりました。我が家も、私と夫が育休を取得予定です。そもそもの制度概要や現状の課題、企業や従業員にとってのメリットなどを考えてみます。
なぜ男性育休が始まったのか
日本は、少子高齢化であり、女性の就業率も上がっています。男性の育児休業取得率は、2020年度で12.65%に留まり、取得希望だったにも関わらず取れなかった男性社員は29.9%にのぼるそうです。日本の男性が家事、育児をする時間は他の先進国に比べても最低水準となっており、それが子供を持つことや女性の就業継続に影響を与えている、そのために日本政府は2025年までに男性の育児休業取得率を30%まで上げることを目標にしています。
新しい「男性育休」はいつから始まるのか
2022年4月1日〜段階的に始まり、10月からは「産後パパ育休(出生時育児休業)」が始まります。今でも男性育児休業制度はありますが、子供が誕生する男性社員に対し、育児休業制度の説明をする義務が企業や団体側に発生することが大きな変更点です。
2021年6月
育児・介護休業法が改正
2022年4月〜
①研修や相談窓口の設置など育児休業を取得しやすい雇用環境の整備を行うこと
②これから子どもが産まれる従業員等への育児休業制度などについて
個別周知・意向確認を行うことが企業に義務付けられ、これまで以上に男性が育児休業を取得しやすくなる。
2022年10月〜
男性の育児休業の取得を促進するための新たな制度
「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設。
産後パパ育休ってなに?
育児休業とは別に取得可能な制度
- 子供の出生後8週間以内に4週間まで取得可能。
- 原則、休業の2週間前までに申し出
- 分割して2回取得可能(はじめにまとめて申し出が必要)
- 事前に調整した上で、休業中に就業可能
※休業期間中の労働日・所定労働時間の半分
※休業開始日・終了日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満
育児休業取れるのは、どんな人?
1歳になるまでの子供を育てる男女従業員なら取れる!
- 会社の制度ではなく、国の制度で男女関係なく取得可能
- 妻が専業主婦でも男性は取得可能
- 妻が育休中でも、夫も取得可能
- 有期契約社員も一定の条件を満たせば取得可能
※今の会社で1年以上働いている(2022年3月末までの条件。2022年4月1日以降は条件撤廃)
※赤ちゃんが1歳6ヶ月になるまでの間に雇用契約がなくならないことが明らかでない
期間は、子供が満1歳になるまでの間、希望する期間取ることができます。1歳以降、保育所等に預けられなかった場合、1歳6ヶ月まで延長、1歳6ヶ月時でも預けられなかったら2歳まで延長になります。
※両親が共に育休を取る場合は、1歳2ヶ月まで取得できます。(パパママ育休プラス)
例えば、母親が1歳時に仕事復帰時に夫がサポートとして2ヶ月交代で休むことが可能!
育休を取るにはどうしたら良い?
育児休業開始の1ヶ月前までに勤め先に申し出ます。会社や組織によって、用意しているフォーマットがあるので、担当部署に聞いてみましょう。
<申し出る内容>
・申し出の年月日
・氏名
・出産者(妻)の氏名、予定日、続柄
・休業開始予定日と休業終了予定日
男性が育休をとるのは、オイシイのか?
夫婦のメリット
- 夫が育児を行うか否かで、妻の愛情が変わる!?
下のグラフは、女性たちにライフステージごとの愛情の配分先の変化を回答してもらい「女性の愛情曲線」を調査したものだそうです。東京都が妊娠した女性向けに配る冊子にも入っていました。
これを見ると、女性は出産を機に、子供への愛情が急上昇する一方で夫に対する愛情はガクッと下がっています。夫婦が協力し合って子育てをした場合、夫に対する愛情はゆっくり回復していきますが、何もしないと高校入学時には0%に近いですね。子育てがひと段落した段階で、離婚を選ぶ...という選択が見える頃かもしれません。女性が働くことが当たり前になると、離婚のハードルも下がるので仲良し夫婦のままでいたかったら、積極的に育児参加してもらった方が良さそうですね。
「女性の愛情曲線」
出典:東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 渥美由喜著「夫婦の愛情曲線の変遷」 - 産後うつの予防
産後3日以内に悲しみや惨めな気持ちになる症状は、マタニティブルーと言われ、多くの女性が体験するものだそうです。2週間以内で収まると言われていますが、産後うつは、それより深刻な状態で2週間から数ヶ月続きます。発症するピークは、2週間から1ヶ月。産後、心身ともにボロボロの状態でなりやすいので、その間に母親だけが育児を行うことがないようにしたいですね。里帰りして実母に手伝ってもらう方も多いと思いますが、義母の手伝い、産後ドゥーラの利用なども選択肢です。 - 新しい家族のスタートを共につくっていく体験
女性は、妊娠している期間から子供の存在を胎内で感じていますが、育児は夫と同様、最初は初心者です。スタート時点では、母乳が出るか否か以外、差がありません。産まれた後に、育児を試行錯誤するなかで親になっていくと思うので、新しい家族の誕生を夫婦で受け止め、24時時間体制で対応していくことに意味があるのではないでしょうか。男性が育休を取ることで、ジェンダーバイアスに気づいたり、社会的弱者の気持ちがわかった、思い通りに物事が進まない経験で仕事のマネジメントにも役立った、という声もあるようです。育児の大変さを夫婦で共に感じる体験だけでなく、我が子の成長に幸せを感じる、そんな瞬間も味わえるのは限られた時間だけです。
組織側のメリット
会社側にもメリットはあります。
- 国による助成金の手厚い支援
国の制度としての育児休業は、会社視点でみると、有給ではなく無給休業であり、育児休業給付金は国から支給されます。有給休暇で発生する、育休中の社員の人件費、社会保険料(厚生年金、健康保険)が発生しないので、会社としては金銭的な負担は減ります。
また、男性労働者が育休を取ることを推奨するために、厚労省が両立支援等給付金を出しています。金額は、人員欠損のダメージが大きくなるであろう、中小企業ほど保障が手厚い内容になっています。まだ、男性の育休取得率が1割なので成立する制度であり、永続的な取り組みではないと思うのでもらえる企業や団体は申請を出すといいと思います。
厚労省のページより「両立支援等助成金のご案内」
https://www.mhlw.go.jp/content/000756789.pdf - 労働効率化・働きやすい環境の構築
日本の組織は生産性が低いと散々言われていますが、少子高齢化による人手不足、加えて労働賃金が上がらない日本経済では、女性の社会進出、共働きが必須になってきました。人生100年時代と言われ、労働期間も伸びたことから育児や介護を理由に離職がないよう、みんなにとって働きやすい環境をつくっていくことが多くの組織で求められることです。
マネジメント層の男性で、育休取得の経験がある方はどれぐらいいるのでしょうか。部下が育休を取る時の制度理解やチームでのサポートはもちろんのこと、復帰後の仕事のプラン、キャリア支援など、取得してみないと気づかないことはたくさんあるように感じます。仕事が属人的にならないように、体制をつくる必要もあると思いますが物事が起きないとなかなか組織は変わらないものです。コロナは、仕事の仕方を大きく変えるタイミングになりました。育休もその波に乗って、変換期になればいいですね。 - イメージアップ
企業は、ESGやSDGsに対してどんな取り組みをしているのか社会的側面からチェックされるようになりました。「男性育休取得率」は、その一環として今後判断される数字になります。若い学生や社員ほど、男性が育休を取ることを当然と捉えている風潮もあり、採用活動にもつながります。
現在、大企業を中心に育休を取る社員が増えていますが取ったとしても1週間前後が大半で、1ヶ月、数ヶ月ともなるとまだまだ少ないと思います。
まとめ
2022年4月から段階的に始まる男性育児休業制度について触れました。男性従業員は、育児休業取得できる権利を、企業は推奨する義務が強化されたことが大きな変化です。より柔軟に男性が育児で休みやすくなる「産後パパ育休制度」は、10月から始まります。
男性育休制度は、従業員と企業にとってそれぞれメリットがあり、後ろめたい気持ちを持って休むものではありません。
想像以上に、国が本気出して男性従業員が育児参加するように促す制度だと感じました。これはチャンスだと思うので、女性(妻の皆さんも、職場で働く同僚の方)も男性社員が育休を取れるように、働きかけてほしいと思います。